社会倫理学講義 (有斐閣アルマ) | 稲葉 振一郎

社会倫理学講義 (有斐閣アルマ) | 稲葉 振一郎

この本は,応用倫理学(生命医療,環境,動物)や,中でも特にAI倫理学について,後半で書かれている.そちらが興味があったのだが,いつも通り初めから順に読んだ.講義形式らしいし,途中のどこからでも読めるような書き方ではなさそうなので,それが正解だと思ったが,実際,前半の古典的な徳倫理学,規範倫理学,メタ倫理学,そして再び徳倫理学への注目や応用倫理学という流れを追いかけることができた.前半も,後半も,大変ためになった.「第8回 現代倫理学のコンテクスト」までが前半で,この回に書いてあることを終えるようになったら前半は修了,同様に「最終回 人間とはどのようなものか?」は後半の修了条件だと思う.2回通し(2回目は要点を追いかけて速読)で読んだが,理解度80%.そんな簡単に100%理解できるような軽い内容ではないが,かといって,大卒だったらほかの予備知識なしに読み進められるはずという意味で,専門的な内容を扱いつつ一般向けといっていい倫理学のテキストだと思う.特に今後,あらゆる市民やビジネスパーソンSDGsをより意識して生活し仕事をして生きていく世の中になると思われるので,一読をお勧めしたい.

AIの倫理学 | M. クーケルバーク

AIの倫理学 | M. クーケルバーク

公平な機械学習アルゴリズムが2018年ごろから注目の研究トピックとなり、同時にEUやAI4Peopleでの信頼できるAIの原理、ガイドライン、7産業別の手本に続き、先ごろ4月に法制化案が発表された。そんな中、AIの倫理的側面に関する政治学倫理学など、社会学および哲学分野からの、技術政策に対する提言が盛んになっている。そんなわけで、データサイエンティストやAI技術者らの、本分野への関心も高いと思われる。

そういった読者層の関心に応えるのは8~9章だろう。これらの章では、道徳的責任の第一条件=制御の条件(control condition)と道徳的責任の第二条件=認識的条件を、AIは充足しうるのかという議論に始まり、説明可能なAIに求められる要件や、重点となるAI研究課題を明らかにしている。さらに、公平な機械学習アルゴリズムが目指すべきものを、目指すべきことかどうかを含めて議論している。これらの内容と結論は、読者らにとってはおそらく承知済みのことであろうが、技術倫理的な側面からの解釈という意味で有用だと思う。

ただ、本書の価値は、AIを取り巻く倫理的な問題を、AIは道徳的な行為者ないし被行為者としてどう扱うべきかを、この問題に対する人々の理解を文化的なコンテキストから説明づけ(1~5章)、AIの倫理的な側面を検討することは、人間の倫理的な問題を考察することにほかならず、AI政策提言が果たしうる役割や(10~11章)、その中でのAIの倫理=持続可能性を持ったAIが、人間中心であるべきとは限らないことやを示そうとしているところにある(12章)。

一方、11章以降の内容は具体性は低いように思う。例えば、AI開発の早期に倫理的課題を検討するべきで、これを制約やネガティブなものと考えるのではなく、リスクを低減することによって、ビジネスや社会の長期的で接続可能な発展に貢献しているものとして、「ポジティブな倫理」を目指すことが重要だとしている。理屈ではわかっても、そちら側へのインセンティブ設計ができなければ、机上の空論ではないだろうか。だからこそ環境政策には時間がかかりすぎて、間に合うのかどうかわからないのだ。また、AI政策がAIの存在を前提にしているところからスタートしている以上、どのような仕事はAIにゆだねず人間に残すか、といった重要な議論には影響を与えないことを本書も指摘している。だとしたら、AIを使わない可能性や、AIにゆだねない仕事を決めることなどが重要だと言いはしても、その選択肢は初めから検討外で、結局のところなるようにしかならないとしか、今のところは思えない。

 

三体 | 劉 慈欣, 大森 望, 光吉 さくら, ワン チャイ, 立原 透耶

三体 | 劉 慈欣, 大森 望, 光吉 さくら, ワン チャイ, 立原 透耶

家族の勧めで読んだ.三部作って聞いたけど,どっちかっていうと上中下間の上巻.お話まだ終わってないから.というかこれから始まる感じ.中国だけど海外SFの雰囲気でよい.今年中に,二作目,三作目まで,読み終われるかな.

〈わたし〉はどこにあるのか――ガザニガ脳科学講義 (Kindle版),マイケル・S・ガザニガ

〈わたし〉はどこにあるのか――ガザニガ脳科学講義 (Kindle版),マイケル・S・ガザニガ

自分は自由な意思を持って物事を決定しているようにみんな思っているけど、脳は様々なモジュールで構成されていて、合理的な判断を自分が下す前に、それらが物事を決めてしまっている。説明するモジュールであるインタープリタが、あとからもっともらしい理屈をつけて、まるで自分が意識的にそれらの決定を選択したかのように感じているだけ。

 

後天的に獲得した形質が遺伝しているように見える場合があるが、それは、ある形質が環境に作用した結果、変化した環境に適応する方向に選択圧がかかるということ。環境が直接遺伝子に作用するということとは違う。このような、遺伝→環境、環境→遺伝のように、上向き、下向きの「因果」が進化に関係している。

 

今昔百鬼拾遺 河童 (角川文庫) Kindle版

今昔百鬼拾遺 河童 (角川文庫) Kindle版

あれっ?シリーズ1作目の「鬼」の分をアップしてなかった?

さておき,事件の中の事実は結構すぐに気づくことができそうなのに,最後の性悪説解釈と性善説解釈に結びついていくあたりが事件の真相みたいなことで,よろしいかと.

2019年に読んだ本

4冊に見えますが,上下巻のものが2つあるし,「ヒトごろし」は分量的には2冊分w.ということを考えれば,分量的には7冊.下半期は忙しすぎて0冊.これは事情が事情だから問題なし.読みかけのが1冊あります.

フライト中や,週末にビデオなど観ました.以下覚えているものだけ.

  • Rome シーズン1
  • Rome シーズン2
  • 高い城の男 シーズン4
  • 秘密 THE TOP SECRET
  • アイアムヒーロー