マルクス・ガブリエル 危機の時代を語る (NHK出版新書) | 丸山俊一

マルクス・ガブリエル 危機の時代を語る (NHK出版新書) | 俊一, 丸山, NHK「欲望の時代の哲学」制作班 |本 | 通販 | Amazon

 

社会倫理学講義を読了以降、哲学ってカントやマルクスのような理屈っぽい議論が何の意味があるのか少し見えたし、近年になっての応用倫理学の広がりや徳倫理学への揺り戻しで、身近なところでよい社会やよい生き方とは何かを議論するようになっているようで、興味がわいている。マルクス・ガブリエルの「なぜ世界は存在しないのか」は、ベストセラーになったと聞いたのだが、よい睡眠導入剤になってしまったので、ちょっとやさしめなところで、NHK出版新書の出番。図書館で借りてみた。

「哲学エライ!」みたいな言い分には反感しか覚えない。哲学がよい社会やよい生き方を導くとも思えない。だって、過去を振り返れば、却って害悪をなした歴史の積み重ねでは?なのになんでエライと言い張れるのか?「新しい実在論」とか言われても、それって、「新しい民主主義」が抽象的だと揶揄されるのと同じレベル(原著を読んでから批判しないといけないのだけど)。インタビューものだから、という点は差し引かないといけないが、狂人と天才は紙一重だなあというのが正直な感想。

個人的にはやっぱり、物理学と数学のコンビが学問の王だと思うのだけど。自然科学の独走が様々な問題を引き起こしたと非難するが、それだったら哲学だって同じなのは上述のとおりでしょ?良くも悪くも、社会を変える力があるのは自然科学であって、それ以外はその取り巻き。哲学が勝手に、ほかの学問は哲学の一部だと言いっているだけで、それはもう大昔の話。

以上、率直な感想でした。かといって、哲学への興味が失せたわけではない。毒にも薬にもならないものよりは、ずっと面白そうだから。