火花

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又吉 直樹
文藝春秋
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 芥川賞を受賞し近年ないレベルのベストセラー。こうなっては却って手にとりづらいし、お笑い芸人が、お笑い芸人を描いた小説ということもあり、初めて行った本屋で何か買おうというのでなければ、敬遠していたかもしれない。読んでみれば娯楽になっているし、お笑い芸人の思考パターンがわかり、見る目が変りそう。流行りものに対しては構えずに、やってみることですね。出版業界ウハウハでしょうね。

【図解】ピケティ入門 たった21枚の図で『21世紀の資本』は読める！

【図解】ピケティ入門 たった21枚の図で『21世紀の資本』は読める！
【図解】ピケティ入門 たった21枚の図で『21世紀の資本』は読める！
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株式会社あさ出版 (2015-02-20)
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 はじめから「21世紀の資本」を読んで理解するのは無理だろうと思っていた。こちらは経済は素人で、しかも苦手ときている。この本は、経済の専門家がまとめてくれているのだから大助かり。
「r > g」のrは資本収益率を、gは成長率を表わしている。素人な解説はしないが、要するに格差が拡大する構造をシンプルに表現した不等式だと思ってよい。対して、ノーベル賞を受賞したクズネッツの理論は「r = g」である。両者ともデータに基づいて導出した結論でありながら、なぜ正反対になるのか、といったあたりがPart2で解説されている。このへんの見識が、ピケティの理論の要約の正しさ、研究の価値、主張の背後の読み解き方について、著者の意見を信用してよいだろうと思わせる。
元本には論評が多数あって、中には曲解もあるとか聞くし、他の解説本にはオビに「r > g」だけが目立つという、質の低そうなものもある。最初に手にとった解説本が、この本だったのはラッキーだった。
kindleプライム無料で読んだのだが、図表がポイントの本なので、紙で読んだほうがよさそう。

意見分析エンジン―計算言語学と社会学の接点

意見分析エンジン―計算言語学と社会学の接点
意見分析エンジン―計算言語学と社会学の接点
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大塚 裕子 乾 孝司 奥村 学
コロナ社
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 1〜3章は、意見分析を社会学の観点で解説しており、この本を読もうと思った目的に合わないのでスルー。4〜7章を読んだ。

4章では、意見分析の中でも、その一部である評価分析について、基本的なアプローチを解説。1)評価表現辞書の構築、2)評価情報を観点とした文書分類、3)評価情報を含む文の分類、4)評価情報の要素組の抽出と分類である。1に関しては、a)語彙ネットワーク(WordNet)、b)コーパス内での共起情報(検索エンジン)、c)周辺の文脈を利用する手法が紹介されている。4に関しては、<対象,属性,評価>の3つ組で表わされる属性辞書を、スロットとコーパスの間をブートストラップする方法が紹介されている。

5章では、構文論(syntax)と語用論(pragmatics)に着眼した、意見分析の実践を紹介。語用論としては、モダリティを表わす文法的表現(真偽判断:「だろう」「らしい」「ようだ」、価値判断: 「ことだ」「べきだ」「ものだ」「なければならない」「ほうがよい」、説明: 「のだ」「わけだ」など)とアンケート文をパターンマッチし、意味タグを付与することで交通問題に関するさまざまな意見を分析している。語用論についても同じデータを対象に分析内容が示されているようである。著者自身が7章で認めているように、意見分析エンジンとしては未成熟なアプローチとなっていて、技術になっていない。

6章ではblogWatcherを紹介。4,5章で言及のある機能を含む、様々な分析機能を融合させたサービスとなっている。もう10年近く昔の本なのだが、現在の技術レベルも大きな変化がないように見える。この分野にはブレイクスルーまたはパラダイムシフトが必要とされていると思う。

カーネル多変量解析―非線形データ解析の新しい展開 (シリーズ確率と情報の科学)

カーネル多変量解析―非線形データ解析の新しい展開 (シリーズ確率と情報の科学)
カーネル多変量解析―非線形データ解析の新しい展開 (シリーズ確率と情報の科学)
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赤穂 昭太郎
岩波書店
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 SVMとのつながりでしか理解していなかったカーネル法だが、実はもっと一般的で、サポートベクトルとは独立な概念。基本の線形モデルが特徴ベクトルの重みつき和で定義されるのに対し、カーネル多変量解析では、サンプルと入力のカーネル関数値の重みつき和で定義されるという、双対問題を先に与えてしまってから、カーネル関数の性質を考えていく本書の説明のほうが、これまで読んできた解説記事や書籍よりも、ずっとシンプルで理解しやすかった。正則化項の意味がリプレゼンター定理を知ることで理解できたし、グラム行列が正定値でないと何が、なぜ、どれぐらいマズいのかも理解でき、得るところが大きかった。

固有値問題に帰結されるクラス(主成分分析、ラプラシアン固有マップ法、ISOMAP、スペクトラルクラスタリング、判別分析、正準相関分析、独立成分分析)、凸計画問題に帰結されるクラス(SVM,SVR,ν-SVM、One-class SVM)に、それぞれ1章ずつ使って整理しているので、様々なテクニックの相互の関係がよくわかる。カーネル設計(拡散/フィッシャー/周辺化/多項式/文字列カーネル)の章を読むことで、独自カーネルの考案や計算高速化ができそうな気がしてきた。

カーネルの理論(6章)汎化と正則化の理論(7章)は高難度なため、目を通した程度だが、非常に興味深い内容であり、本書だけでなく、このトピックをより詳細に扱った他書を含めて再チャレンジしたい。

遺伝子医療革命―ゲノム科学がわたしたちを変える

遺伝子医療革命―ゲノム科学がわたしたちを変える
遺伝子医療革命―ゲノム科学がわたしたちを変える
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フランシス・Ｓ・コリンズ
日本放送出版協会
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 科学の進歩によってゲノム解読が可能となったが、自分のゲノムがどうなっているかがわかることと、この情報を医療において有効に活用することの間には、技術とは別の課題がある。

少々お金があれば、ゲノムスキャン(23andMe,Navigenics,deCODE)が受けられるようになったが、これらのサービスによって得られる情報は、どのように役立てればよいのだろうか。癌、人種、感染症、脳、老化、薬、幹細胞医療/自己細胞医療といった、カスタム医療に関するトピックについて、ゲノムの情報はどう役立てうるのかを、医療の選択における意思決定の考えかたも含めて述べている。

単一遺伝子性(嚢胞性線維症など)の病気に関しては、ゲノムスキャンによって医療の選択肢が増えるようだ。母体スクリーニング、出生前診断などである。一方、多遺伝子性の病気(糖尿病など)に関しても、リスクを知ることは有効な場合がある。致死性の病気の告知と同様に、リスクを知るべきか否かについては、RBI方程式(知ったから打てる手がなければ知らないほうが幸せという自然な考え方)がある。

医療の現場でも、まだゲノムスキャンの情報活用への理解の度合いやスキルレベルが違うようだ。一方で、癌や糖尿病などのよくある病気に関しては、家族歴が非常に有効でありながら、実際にはカルテに未記入なケースが多いそうである。ゲノムスキャンの結果が医療保険の適否にどう影響するかについて、相談が受けられるようなサービスや関連する法整備も、十分とはいえない。患者側も、十分に知識を持つとともに、合理的かつ冷静な態度が必要というのが、現状のようである。

数学的推論が世界を変える―金融・ゲーム・コンピューター (NHK出版新書 394)

数学的推論が世界を変える―金融・ゲーム・コンピューター (NHK出版新書 394)
数学的推論が世界を変える―金融・ゲーム・コンピューター (NHK出版新書 394)
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小島 寛之
NHK出版
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 アルゴリズムトレードに数学がどう活用されているのかという興味で読みはじめた。まえがきにゲーテルの不完全性定理や様相論理を含む数学的論理について概説するとあり、数学的論理を経済分野への応用を通じて理解できるのではと期待。予想以上にわかりやすく、しかも面白く、専門書も読んで見る気になった。特に、クリプキ意味論を学べたことで、様相論理のポイントを理解できたと思う。これまで読んだ教科書では、構文論について言及がある程度で、述語論理との違いがわからなかった。ゲーテルの不完全性定理の証明のアウトラインもよくわかる。