これなら分かる応用数学教室―最小二乗法からウェーブレットまで

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金谷健一
共立出版
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1. 最小二乗法, 2. 直交関数展開
高校で平面ベクトルを学んだ後、最小二乗法、線形代数、複素解析あたりを学ぶと、似たような話が出てきて、何を学んだことになるか混乱する。さらに計量空間を学ぶと、とたんに難しくなった気がしてしまう。1-2章は、このあたりを整理し、なぜ公理主義的な現代数学の考え方に意味があるのか、少しは判った気になれる。実用的には、このレベルの理解で足ることも確かに多いし、このレベルの理解がなくては、さらに専門的な理解のレベルに到達するのも難しいような気がする。数学のセンスが天才的な人はそうではないのかもしれないが。

直交多項式(ルジャンドル、チェビシェフ、エルミート、ラゲールの多項式)が、区間と重みに関しての多項式で表わされる直交関数系のバリエーションであり、1,x,x^2,...の多項式をシュミットの直交化することによって自然に得られるものとして、相互に関連づけた説明が理解を助けてくれた。

3. フーリエ解析, 4. 離散フーリエ解析
2章までに直交関数系について学んだ後に、その一つフーリエ解析は理解できても、離散フーリエ解析の理解が足りなかった部分を学ぶことができた。このテキストの聞き手役の学生は情報系なので、連続値の上での理論を、離散値の上でのアルゴリズムに書き下すときに、効率のよいアルゴリズムを設計しうる例だと思うと、アルゴリズムを研究することに意味があるということがわかるだろう。離散コサイン変換の存在意義の説明がなされており、ここも勉強になった。

5. 固有値問題と二次形式, 6. 主軸変換とその応用
線形代数においては、1,2章の内容は固有値問題と二次形式とその標準形を求める問題に対応づけられる。対称行列の固有値と固有スペクトル、対角化とスペクトル分解、正値対称行列と正値二次形式のテクニックを解説した後、これらの工学的に重要な応用として主成分分析、画像圧縮(アダマール変換、離散コサイン変換)、特異値分解が6章で説明される。

7. ウェーブレット解析
フーリエ変換についてだいたい知っているならば、この章だけ独立して読むことができる。難しいと思っていたウェーブレット解析のアイディアは実は非常にシンプルであり、それにも関わらず数十年前にようやく見いだされた、応用面でも非常に重要なテクニックだと判った。ハールのウェーブレット以外にも一般ウェーブレットが定義でき、個別のウェーブレット定義に付随する生成数列と分解数列が入手できれば、上昇サンプリングと下降サンプリングをほぼそのまま利用して計算することができる。

おわりに
学生によるテキストのまとめがすばらしい。ここだけ読むと、本テキストの要点をふりかえることができるので、読み返さなくても細かい内容を思い出せそうなほどである。