データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」 ビッグデータからビジネス・チャンスをつかむ

データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」    ビッグデータからビジネス・チャンスをつかむ
ディミトリ・マークス ポール・ブラウン
日経BP
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データサイエンティストになれるのはアナリスト(計量経済学)か、エンジニア(統計学)か。アナリスト視点での分析(=魅力的なリトルデータ)と、エンジニア視点での分析(=ビッグデータ)か。こういう二元論がよいのかどうか知らないが、アナリスト視点の本書には、現場の知見が多々あるだろうと期待。

 

[学んだこと]

- データを分析してわかったことを、シンプルかつ率直な言葉で説明できなければならない。シンプルで覚えやすいイメージにして伝えることの重要性。「ストーリー」がなければデータを分析する意味がない、分析できたことにならない。「それで何が言いたいんだ」と言われるのを待っているようでは困る。

 

- 実際的な統計モデルの開発例。直感を統計学的な技法で定量化していくようなイメージ。電話契約の解約モデル(手づくりの線形モデル)、フライト回数の予測モデルと顧客価値の算出モデル(人間の思考をアルゴリズム化)は、割り切り方が大胆で目からウロコ。

 

- ターゲティング(第2章)、メッセージ(第3章)、ロケーション(第4章)、予算(第5章)をデータに基づいて決定し、測定(第6章)、最適化(第7章)をまわす計量経済学の考え方。測定できるようになることが第一で、データの質と量や、仮説の妥当性に拘りすぎると、分析をはじめることすらできない。データがなければ近似曲線をでっちあげるハイブリッド型アプローチも躊躇しない世界。

 

- 各フェーズ毎にある程度の定石がある模様。解約モデルや顧客生涯価値(ターゲティング)、ニーズによる顧客セグメント抽出(メッセージ)、売上モデル、投資/回収曲線(予算)など。

 

- 実行、最適化は技術の進歩が著しい。A/Bテストより強力な多変量テストがアメリカ大統領選挙でも活躍。

 

- 人々はモノを購入するとき合理的な判断をしていないという事実。だからプランナーと協力し、潜在的ニーズ仮説の洗い出し、アンケートでの検証など、社会学的なアプローチとの融合が必要。

 

- データ収集・活用とプライバシーの問題。バリューエクスチェンジ(価値交換)によって克服されるという予想。「有料の壁(ペイウォール)」に似た、「データの壁(データウォール)」ができるかもしれない。

 

- パートナーに求められる能力のうち、市場差別化要因になるものは次。1)データへのアクセス、2)データ整備の自動化、3)独自のアルゴリズム、4)意思決定ツール(ダッシュボード、シナリオプランニング)、5)実行支援サービス

 

- データにいくら払うかを左右するのは、予測貢献度/鮮度/排他性。

 

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